自分なりの耳コピ方法

私はソロギターを弾くのが趣味ですが、もう一つ、耳コピ(ソロギター曲を耳で聴いてコピーすること)もある意味趣味だと言えます。人からは「なぜそんなことができるのか理解できない」とよく言われます。しかしながら私は特別な音楽教育を受けたわけではなくただギター音楽が好きなだけであり、楽譜はないけど弾きたい曲に出会うと何とか弾けるようになりたい、可能なら譜面にしたい、と思ってずっと自己流でやってきました。その具体的な方法について紹介したいと思います。耳コピしたい方の参考になれば幸いです。

  1. 用意するもの
  2. 準備
    1. MPC-HCの設定
      1. キーバインド
      2. 高速シーク
    2. Guitar Pro 6の設定
      1. 初期設定
      2. スタイルシート
      3. スコア情報
      4. チューニング
      5. その他
  3. 動画から耳コピしてみる
    1. まずベース音だけ取ってみる
    2. ベース音以外を取る
      1. 短く切る

用意するもの

パソコン
これは必需品。私はWindowsを使っているので、以下はそれ前提で書いています。
スピーカー
パソコンに外付けでスピーカーを付けた方が音も良いし聴き取りやすくなります。
弾きたい曲の音楽ファイル
拡張子は .wav。音楽CDから単純にリッピングしたファイル形式です。
弾きたい曲の動画ファイル(存在する場合)
いろんな入手方法がありますが、一番手っ取り早いのはYouTubeからダウンロードすることです。拡張子は .mp4。4K Video Downloaderを利用すれば簡単にダウンロードできます。音楽CDと全く同じように弾いている動画はまず無いと思いますが、それでも運指を確認する上では大変重要な情報源です。耳コピ+目コピは耳コピOnlyよりもグッと効率的になります。
チューニング情報
音だけ聴いてカポ位置とチューニングを判別できる方もいらっしゃいますが、こういった情報は事前に知っておくほうが明らかに効率的です。ネットで調べればわかる場合もありますが、わからない場合もあります。そういう時はどうするか。演奏者に直接聞きましょう。それが一番早いし正確です。
耳コピプレーヤー
WAVファイルを再生するのに使うフリーウェア。このソフトが優れているのは操作感がまるでラジカセのようで、SpaceキーでPlay/Stop、Zキーで曲の頭に瞬時に戻れます。区間指定もできるので、わかりにくい所を何度も何度も繰り返し聴くのに便利です。
MPC-HC
動画を再生するのに使うフリーウェア。これ一つあればたいていの動画が再生できるし動作が軽いです。それとキーボードショートカットをカスタマイズできるので、耳コピプレーヤーと同じ操作方法にしておくと紛らわしくなくなります。
Guitar Pro 6
楽譜を製作するためのソフトウェア。これは有料ですが、他の専門的なものよりはリーズナブルです(ダウンロード版なら税込6,480円)。
最前面でポーズ
これはあっても無くても良いのですが、耳コピプレーヤーに「常に手前に表示」機能がないのでその機能をプラスするために使用しているフリーウェアです。
ギター
弾きながら耳コピしないと当然効率が上がりません。必需品。

準備

MPC-HCの設定

耳コピ+目コピを円滑に行なうために、動画再生ソフトMPC-HCのオプション設定をカスタマイズしておきます。

キーバインド

オプション〜キーバインド

私はこのように設定しています。動画再生中にZキーを押せばちょっとだけ戻り、Xキーを押せばちょっとだけ進みます。耳コピ+目コピは同じ部分を繰り返し聴く・見ることになるので、この設定は欠かせません。ZXを選んでいるのは後ほど説明する耳コピプレーヤーとの操作性を統一し混乱を避けるためです。

高速シーク

オプション〜詳細設定

高速シークをオンにすることでキビキビとした動作になるのでこの設定をオススメします。

Guitar Pro 6の設定

楽譜作成ソフト「Guitar Pro 6」も最初にきちんと設定しておきます。

初期設定

初期設定

このあたりは個々人の好みがあると思いますので、あくまで私自身の設定を紹介しておきます。「My_style」は下記で説明するスタイルシートを一つのファイルとして保存したもので、新しい楽譜を作る時はいつもそのスタイルシートを適用するように設定しています。

スタイルシート

基本はクラシック標準。あとは好みで設定しています。

スタイルシート〜ページ・スコア フォーマット
スタイルシート〜組段と五線
スタイルシート〜ヘッダとフッタ〜1ページ目のヘッダ
スタイルシート〜ヘッダとフッタ〜1ページ目のフッタ
スタイルシート〜ヘッダとフッタ〜その他のページ
スタイルシート〜テキストとスタイル
スタイルシート〜記譜

スコア情報

スコア情報

各情報を入力するダイアログです。(これを開いた瞬間は何も入力されていません)%TITLE%等はそれぞれ上記スタイルシートにおける指定に対応していることを表しています。すなわち、このスコア情報のタイトルに「楽曲」と入力しておくと、スタイルシートで%TITLE%と指定した欄に「楽曲」と表示されます。ここもまたケースバイケースで入力内容を変化させています。

チューニング

チューニングについてですが、プリセットで様々なチューニングが登録されています。

プリセットされているチューニングパターン

このプリセットには無いチューニングも自分で追加が可能です。ギターのペグの▲▼ボタンを使ってチューニングした後、チューニング欄右横の矢印をクリックします。

チューニング欄

下記ダイアログが出てきますので、自分で好きな名前を付けます。

カスタムチューニング名を入力します

すると下記のように追加されます。

プリセットされているチューニングパターン

その他

その他、楽譜を作成するにあたり最初に設定しておくことは、

です。これらは楽曲によって異なりますので、どんな楽曲を耳コピするかが決まってから設定することになります。

動画から耳コピしてみる

では実際にギターを抱え動画を再生しながら耳コピ(+目コピ)してみましょう。今回選んだ楽曲は、現時点ではまだ世の中に譜面が存在していないと思われる、西村歩による美空ひばりのカバー曲「川の流れのように」です。チューニングは「CGDGBD」でカポは2フレットです。Guitar Pro 6側でチューニングとカポ位置の設定も最初の時点で行なっておきましょう。音色は内蔵プリセットの「Steel Reverb Pick」がオススメです。

Guitar Pro 6の設定

まずベース音だけ取ってみる

動画をMPC-HCで再生中

私が耳コピする場合は、まずベース音だけを8〜16小節分取り即記録していきます。ベース音はほとんどの場合右手親指で弾かれていますので、動画で右手を見ながら音を聴けばどのタイミングでどの音が弾かれているのかわかってくるはずです。

Spaceキーで再生を開始しましょう。もう一度Spaceキーを押せば止まります。再生中にZキーを押せばちょっと戻り、Xキーを押せばちょっと進みます。最初はなかなか思うように音を取れないかもしれませんが、上記方法で繰り返し見て聴けば少しずつわかってきます。

ベース音はGuitar Pro 6の第2声部へ入力しています。

Guitar Pro 6の声部選択

とりあえず9小節取ってみました。メロディが半拍食って入るので最初の1小節目は全休符にして2小節目からベース音を記録します。

最初の9小節目まで
音源

この時点でわかることは、

ここでGuitar Pro 6の設定を追加しておきます。拍子のデフォルト設定は4分の4拍子なので設定は不要です。キーについては、カーソルを1小節目の1拍目に合わせてから調号アイコンをクリック、Gメジャーを選択します。

調号の設定

テンポは右下の欄から簡単に変更できます。

テンポ指定欄
オートメーション

ベース音以外を取る

では次にベース音以外の音を取っていきます。ベース音以外の音は、わかりやすいように第1声部へ入力していきます。

第1声部を編集

短く切る

コツというものがあるとすれば、それはとにかく「短く切って」音を取っていくことでしょうか。3〜4音くらいでいいと思います。動画をよく見て押弦位置の見当をつけながらギターを弾き、一つ一つ音を探していく。そんなイメージです。

耳と目を総動員します。ここは高い集中力が必要です。Spaceキー、Zキー、Xキーを駆使して同じところを何度も何度も見て聴いていると、段々と音の並びがわかってきます。そしてギターで弾いてみる。「うん?何か違うなあ。おっ、これやこれ!」…その繰り返しです。わかったらすぐにGuitar Pro 6に入力しましょう、忘れないうちに。

あと、最初から完璧に採譜することを求めるのは諦めたほうがいいです。そんなことが出来るのはモーツァルトみたいな天才だけです。一回納得したらどんどん先へ進みましょう。あとで間違いに気づいたらその時にいくらでも修正できます。私の場合、楽曲全体の耳コピ終了後、全体を通して弾いてみて間違いに気づくことが多々あります。

1小節分音が取れたらベース音も加えてその小節全体を弾いてみましょう。そうすれば合っているのかどうかがわかりやすくなるはずです。

9小節分取ってみました。

9小節目まで
音源

下向きの符尾の音符が第2声部(ベース音)、上向きの符尾の音符が第1声部(ベース音以外)です。

縦方向の矢印付き波線がいくつかありますが、これはいわゆる「バラ弾き」を表しています。ソロギターでは頻繁に登場する技で、複数の弦を同時に鳴らすのではなく低音弦側あるいは高音弦側からバラっと(音を分離させて/タイミングをずらして)弾く奏法です。


初稿
平成27年1月12日
最終更新
平成27年1月18日
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